To my dearly beloved
出会いは偶然であるけど、それが極上となればもう“運命”でしかない。
ただひとりの女のコトだけで手一杯とは…、昔の自分の適当さに笑ってしまう。
だが他の女なんてもうどうでも良い。彼女だけが俺を見ていてくれるのなら――…
「遅いな…」
奥さんの未月が帰ると宣言した時間から、早2時間が経過している現在。
俺はといえば、彼女の帰宅時間に合わせて仕事を終えて帰って来たけど。
友人とランチをして来るからと出て行ったが…、幾らなんでも遅すぎる。
オマケに連絡が取れないとなると、“英コーポ社長夫人”である身を案じてしまう。
公に出していないし大丈夫だろうが…、あの胸と顔に吸い寄せられる男は五万といる。
何よりも天然ボケな巨乳ちゃんは、まったくその危機意識がゼロで危なっかしい。
窓の外を見ればすっかり暗い世界に、やけにイライラして車のキーを手に家を出ると。
自分で運転するためのジャガーに乗り込み、ひとまず俺は最寄駅を目指していた。