真偽の証明【公開】


暫くしてから、江坂奏は組んだ脚を下ろした。

「さて、早速話すよ」

「……」


「姫野さん?」


「…う、うん」


返事も上の空に、さっきの笑顔はどういう意味だったんだろうと私は考えていた。

肯定に見えなくもなかったが、否定にも見えた。

気のせいと言ってしまえば、それまでだけどなんとなく気にかかる。

考え事でなければ、一体何をしてたのだろう。


「…ということなんだけど、やってくれる?」


「…へ?あ、うん」

「ホントに?」


しまった。
うっかり返事してしまった。

考え事をすると周りが見えなくなるタイプだから、いつもよく考えもせずに返事をしてしまう。


江坂奏の反応からすると、私は引き受けたことになっているんだろう。


もしかして江坂奏は私のこの癖を知っていた?

そう考えるとさっきの不思議な行動と曖昧な笑顔の説明がつく。

私に考え込ませるために仕組んだとすれば納得だ。


「あのー、実を言うと話を聞いてなかったんですけど」


申し訳なさそうに肩をすくめると、江坂奏は口元に軽く微笑を浮かべた。


いつもと感じの違う笑みに少し違和感を覚える。


あれ?
江坂奏はなんかこう、顔をクシャッとしたような人懐こい笑顔だったはずだ。


そう言えば、今日はその笑顔をほとんど見てない。


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