真偽の証明【公開】
そもそも私は男子とそんなに顔を合わせないので、ただ知らないだけなのかもしれない。
そう自己完結すると、突然聞き覚えのあるセリフが耳の中に飛び込んできた。
私はそれを聞いた途端、今度こそ真っ青になるのが分かった。
『……ということなんだけど、やってくれる?』
『…へ?あ、うん』
そこでプツリと途切れる声。
それは、さっきまでの会話の一部だった。
江坂奏の右のポケットからはチラリと機械が覗いていた。
それを取り出すと机の上に置く。
ボイスレコーダー。
「ホントはこんな真似したくなかったんだけどね」
血の気が引いていくのを感じながら、しかし思ったよりも自分が冷静なことを確認して訊ねた。
「もしかして私の癖を知ってたの?そして返事をするように仕向けた…?」
確信は持てない。
けど、江坂奏はボイスレコーダーを用意している。
つまり、そういうことなんだろう。
「知ってたし、仕向けた。悪いけど俺は必要だと思ったらなんでもする。要は手段を選ばない」
悪びれずに涼やかな顔で話す江坂奏に腹がたつ。
「…卑怯だ」
ボソリと呟くと江坂奏を真正面から睨み付けた。
「こんなことするの、卑怯。陥れるようなことして一体誰が協力するっていうの?話を聞くって言ってるんだから、正々堂々ぶつかればいいでしょ!」
話を聞いていなかった私も悪い。
確かに、私はこの話に乗るつもりはもとから無かった。
江坂奏も最初からそれを感じていたからこんなことをしたんだろう。
だからといって、人を陥れるようなことをするのは最低な行為だ。