真偽の証明【公開】



「私が騙されやすいのも、私みたいな人材がほしいのも、わかった。でも肝心の内容を聞かされてない。これじゃあ、判断のしようがない」


今までの言葉で心が揺れ動いたわけじゃない。


でも、話だけは聞いてみよう。

そんな気になれた。


江坂奏は曖昧に微笑んだ。


「わかった。話すよ。でもこれは誰にも知られてならないことなんだ。聞けば、必ず参加してもらう。覚悟は、いい?」


返事をしかけて一瞬思考が止まった。


「ちょっと待って。あんた、話聞くだけでいいっていったよね!?話聞いたら参加しなきゃいけないなんて、覚悟も何もないじゃない!」


「なら聞かなきゃいい」


はあ?
もうわけがわからない。

話を聞くだけでいいと言われ、話を聞いたら必ず参加しなきゃいけないと言われ、今度は聞かなくてもいいと言う。


もう江坂奏の考えていることがわからない。


私が必要だったんじゃなかったの?
だから、あんなにしつこく付きまとってたんじゃないの?


ほんとに、なんなの。


「私、帰るから」

混乱に任せてソファから立ち上がった。

「そ。じゃ、またね」


意外とあっさり帰してくれることに、拍子抜けした。



「え、帰っていいの?」


思わず聞き返した私に、江坂奏はいつものクシャッとした笑みを返した。


「何言ってんの。自分で帰るって言ったじゃん」


「…そうだけど」


さんざんひきとめといて、帰っていいって?

頭の中がさらにぐちゃぐちゃになる。



「なに?帰んないの?」


「帰ります!それじゃあお邪魔しました」


私は荷物を持ってそそくさと部屋を出た。


江坂奏の考えていることが全く解らない。


ふと、騙されてたんじゃないかと頭によぎる。


私のことを騙されやすいと言っていたし、あの修羅場もどきだって騙したも同然だ。


元々バイトの話なんか存在しないのに、脅して反応を見て、それを楽しんで帰す。

うん、やりそうだ。

不思議とそんな気がしてきた。


さっきの修羅場もどきを思い出す。

あれだって、二人して私の反応を面白がっていた。

もしかしたら、今もその延長線上なのかもしれない。


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