真偽の証明【公開】
私は男子が少し、いや、かなり苦手だ。
男子の前だと口数も減るし、態度も冷たく、クールになってしまう。
どうして苦手なのかと訊かれても、理由が分からないから答えられない。
たぶん、トラウマになるような出来事があったような気はするけど、思い出せない。
でも、頭より体が何よりも正直で、冷たい態度が自然と出てしまう。
とにかく、男子が苦手だ。
早くこの場から逃げたい。
そんな空気が滲み出ていたのだろう。
江坂奏は口元を少しひきつらせて
「そんなに警戒すんなって」
と言ってカラッと笑った。
江坂奏が警戒するなと言ったけど、私はそれに動じない。
彼がどのようなお願いをするのかは分からない。
でも、ここで気を緩めてしまったら、一気に話のペースを持っていかれそうな気がする。
話を最後まで聞かずに何処で逃げ出すべきか。
これが重要だ。
そう、これは心理戦なんだ。
逃げ出すタイミングを逃してしまえば、ズルズルと話を聞かされてしまうし、かといって早すぎてもいけない。
相手の出方を見抜き、いち早く気付く。そして行動に移す。
その為には、不本意だけれども、視線を交じわせる必要がある。
私はじっと江坂奏の目を見つめた。