4度目の正直【短編】
角を曲がると既にヤツはそこにいた。


ただ後ろを向いていたので、私に気付いてないようだ。



「うっ…ウ゛ンッッ」


咳払いでヤツを振り向かせた。



そうでなければ「おぃ」と睨みをきかせているところだ。



「栄…来てくれたんだ」


あ…


その呼び方、久しぶりだ。



「…来いってメールしたのはそっちだろ。」


「返信なかったから来ないかと思ってさ」


そう言ってフッと笑った。



…やっぱこいつ、ウザい。



「じゃあ来なかったってことで。私戻るわ」


回れ右をして、元来た道に視線を戻した。


「ちょい待って」


一歩踏み出したところで、右手を掴まれ足を止められた。



取られた手に驚き振り返ると、先程までの距離がほぼなくなっていた。



「…離せよっ」


「離さない」


「…っ?!」



今までにヤツが私に反論することなんてなくて


それより、こんな真剣な顔を見るのは初めてだった。


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