4度目の正直【短編】
先輩を好きになったのは中学のときで


でも会えなくなった数年間も普通に過ごせたのは



…小さな頃から、隣にヤツがいたからなんだ。



ヤツとの距離が少し空いただけで、こんなにも悲しくて辛くて…



だからきっと────


「同じ…って?」


「好き…」



私は、当たり前すぎた“今まで”を、“これからも”と言いたい


そう思ったんだ



「…あんたが…さ、栄が好きっ!!」



───私は拳を握りしめ、叫んだ。


恥ずかしすぎて、顔が熱くなっているのが分かるくらい。



でも、ヤツはそんな私以上に顔が赤くなっていた。



「…へ…?好きって…えっ?!うそっ栄…え?!夢…みたぃ…」


うわ言のように呟いてから両手を自分の頬に当て、数回瞬きをした


お前は女か!とツッコむ余裕は今の私には到底ない。



だって…


まさか私から“好き”とか言うなんて…っ



「ヤベ───…」


…て、まだ何かブツブツ言ってるし!



…と思ったら、私はヤツの長い腕に抱きしめられていた


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