ホストと私と365日
「あたし、この人でいいや。その人はゆきちゃんが送りにしなよ」

さっきまで話し合っていた人を譲ることにした。


「いいの?てかその気になる人、ほんとに内勤に言わなくてもいいの?」

ゆきは遠慮しがちにこちらを見ている
常に私がいやな思いをしていないか気を配るんだなぁ。

ぜんぜん知らないところで無神経なことしちゃってるときも多々あるんだが・・

まあそこが個性というか、いいところ。

というか人のことは何とでも言える・・・(笑)


「うん、いいや。どんな人かもわからないし」


とりあえず送りを選び終え、帰る準備をし、出口へと向かう。

足取りは重かった


やっぱりちょっと後悔かも・・・

だって、あんなにそっくりな人見たことないもん・・・


そんなことを考えながら入り口横を見ると、薄幕の向こうにその彼がいた。

絶対、あの人だ!!!

しかし幸か不幸か薄幕みたいなのがあってよく見えない。
うぅ~。

この演出がなんとも憎い。


平安時代の垣間見じゃないんだからさぁ~!!


このホストクラブ!タダモンじゃねー!!!

そう思いながらガン見すると
シャツの袖をひじまでめくってるその様子も、Yにそっくり。

薄幕の向こうにうごめく美男子・・・。

う、うつくしぃ・・・



彼は何かをつまみ食いしている。

その姿はオードリー・ヘップバーンがローマの休日という映画でアイスを食べているシーンよりもはるかにおちゃめ。
いやむしろ、エレガント?

バックにはごくせんクライマックスさながらの音楽が聞こえる。


壮大なオーケストラミュージックとともに私たちはビルの外に出た

ひやっと冷たい風がほほを通り過ぎ、現実に引き戻される


しかしいつまでも残像が頭から離れない。


「やっぱり、・・・ちょっと後悔かも・・・」

一期一会。

チャンスはつかんだものにのみ手に入る。

ちゃんとあの人にあいたい。

どんな人か見てみたい。

つかまなくて、いいの??

耳の横で問いかける声がこだまする。
ぐるぐるとそのホストのことが頭の中を回っていた。









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