放電
放課後。
掃除の当番が回ってきていたあたしと辻井はいつもより遅く支度を済ませて、あたしたちが所属している演劇部の部室に向かった。軽くノックをすると中から「はーい」と元気のいい返事が返ってきた。
「失礼しまーす」
言いつつ中に入ると、部活開始時間15分前にも関わらず、もうほとんどの部員が揃っていた。
「ちはーす、先輩」
部員の中でも得にひょろりと背が高い羽鳥が手を振ってきた。その姿にあたしの心拍数が一気に跳ね上がり、身体が石のように硬直する。そんな固まったあたしの背中を辻井がばしっと叩いた。
「こんにちはぁ、遅くなっちゃってごめんねぇ~」
何が“こんにちはぁ”だ! かわいこぶっちゃって! と心の中でぼやきつつキッと睨みつけると、辻井はそれを華麗に無視した。
「で? 何してんの?」
にこやかに部員の輪の中に入っていった辻井の横にあたしも渋々並ぶ。
辻井の問いには後輩の一人であるゆきちゃんが答えた。
「えーとですね、実は次の劇の衣装の意見を出し合ってまして。羽鳥の役、えーと……」
「インテリ系上司・坂出計吾だよね」
あたしが助け舟を出すとゆきちゃんは頷いて、
「そうです。その役の衣装を考えていたんですけど……どうしてもあるところで意見が割れちゃって」
ゆきちゃんはそう言って苦笑した。
すると横から他の部員たちが怒涛のように口を挟んできた。
「絶対銀縁の方がいいんだもん! インテリ系上司だよ!? 黒はやんちゃすぎるよー!」
「いーや黒だね絶対黒。羽鳥には黒が似合う。銀だと羽鳥の魅力が半減する」
「そんなことないもんー!」
……えーとこれはどういうこと?
困惑の表情を浮かべたあたしに耳打ちしたのは辻井とは反対側の隣にいた羽鳥だった。
掃除の当番が回ってきていたあたしと辻井はいつもより遅く支度を済ませて、あたしたちが所属している演劇部の部室に向かった。軽くノックをすると中から「はーい」と元気のいい返事が返ってきた。
「失礼しまーす」
言いつつ中に入ると、部活開始時間15分前にも関わらず、もうほとんどの部員が揃っていた。
「ちはーす、先輩」
部員の中でも得にひょろりと背が高い羽鳥が手を振ってきた。その姿にあたしの心拍数が一気に跳ね上がり、身体が石のように硬直する。そんな固まったあたしの背中を辻井がばしっと叩いた。
「こんにちはぁ、遅くなっちゃってごめんねぇ~」
何が“こんにちはぁ”だ! かわいこぶっちゃって! と心の中でぼやきつつキッと睨みつけると、辻井はそれを華麗に無視した。
「で? 何してんの?」
にこやかに部員の輪の中に入っていった辻井の横にあたしも渋々並ぶ。
辻井の問いには後輩の一人であるゆきちゃんが答えた。
「えーとですね、実は次の劇の衣装の意見を出し合ってまして。羽鳥の役、えーと……」
「インテリ系上司・坂出計吾だよね」
あたしが助け舟を出すとゆきちゃんは頷いて、
「そうです。その役の衣装を考えていたんですけど……どうしてもあるところで意見が割れちゃって」
ゆきちゃんはそう言って苦笑した。
すると横から他の部員たちが怒涛のように口を挟んできた。
「絶対銀縁の方がいいんだもん! インテリ系上司だよ!? 黒はやんちゃすぎるよー!」
「いーや黒だね絶対黒。羽鳥には黒が似合う。銀だと羽鳥の魅力が半減する」
「そんなことないもんー!」
……えーとこれはどういうこと?
困惑の表情を浮かべたあたしに耳打ちしたのは辻井とは反対側の隣にいた羽鳥だった。