放電
 しかしあたしはそこではっ、と意識を現実に引き戻した。あたしの手が羽鳥の手に置きっぱなしなのに気付いたからだ。
「ご、ごめ……! ぼーっとしてた!」
 あたしは慌てて自分の手を離そうとして――しかしその時羽鳥に軽く手を握られた。……ような気がした。
 びっくりして羽鳥の顔を見上げたけれど、本人は素知らぬ顔だ。
 気のせいだったかもしれない。単にあたしが思い上がってるだけなのかもしれない。
 けど。
 反則だよ、それ。
 口の中でそう呟いたあたしの頬は、もうごまかしようのないくらい赤く染まってしまっていた。

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