罪血
14.体育館戦争
『なぁ、瑞希?もう一度言う。それは
わ・た・し・の・え・も・の・だ。』
風で乱れる髪を片手で優雅に払い、不敵に笑って近づく。ふらり、と立ったウェンディーズの前に立ち、しなやかな指先でウェンディーズの顎を持ち上げ、目線を合わせた。
「灑梛!?」
「――――――なんだ」
『別に?ただ…出会ってすぐに殺さなかった事、感謝するんだな』
そう言って灑梛は床を蹴り、後方へ跳んでウェンディーズと距離を取った。
「灑梛…救護班と守護班は、来たんだな?」
『当たり前だ。でなければ私はここにはいない』
灑梛は音楽室の方を見て言った。しかし、すぐに視線をウェンディーズに戻し、下から上まで舐め回すように見たあと、全身傷だらけなウェンディーズを見て笑った。
『あらあら、随分酷いお怪我ですわね、ウェンディーズ様?』
それは、まだウェンディーズが灑梛達の正体を知らなかった時の話し方。
「話しかけるな…」
『あーら、無理ですわぁ、お話ししないと、何もかも分かりませんもの』
クスクスと笑っていた灑梛は、一瞬のうちに表情を殺し屋のそれに変えた。
『瑞希の戦い方は拷問式だからさ?優しかっただろうけど…私は、…そうだな、早く終わらせたいんだ。だけど、お前の苦痛に歪む顔、見てみてぇな』
持ってきた日本刀を鞘から引き抜く。
――――――――――――シャッ
体育館の中は、そんな小さな音も聞こえるぐらい、静かだった。