罪血
「なんだ、それ…?」
ウェンディーズが怪訝な表情をする。当たり前だ。なぜなら…
刀身が、赤黒いから。
「灑梛!お前、それ…」
『フフッ…驚いたか?瑞希。懐かしいだろう、この刀…』
灑梛は刀身を日に当て、反射させる。目を細めて、薄く笑った。
『この刀は、父上が私の入隊祝いに買ってくださった物でな…』
切っ先をウェンディーズに据える。
そこからは、三者無言の睨み合いだった。
灑梛は刃を構え、ウェンディーズは銃を構える。瑞希はワイヤーを弄りながら、ウェンディーズをみて凄惨に笑っていた。
――――――――――――ダンッ!!
やがて、どちらからともなく大きく踏み出し、跳躍する。
―――――――――――パァン!!
しかし、ウェンディーズが灑梛より速く攻撃を仕掛ける。
灑梛は空中で一回転して床に着地した。
散弾銃のため、制服が破け、血が滲み出している。
「灑梛…」
その瞬間、瑞希の纏う雰囲気が豹変した。絶対零度から、氷点下何百度の雰囲気へ。
足音を立てずに踏み出し、足音を立てずに跳躍する。ウェンディーズの頭上でワイヤーを振り回し、ウェンディーズの脳天目掛けて振り落とす。
――――――――――――キィンッ
しかし、どこからか出した短刀で、ワイヤーは弾き飛ばされた。
ウェンディーズが頭上にいる瑞希に向かって、ニィ、と笑う。
瑞希が床に着地した瞬間、散弾銃の引き金を引く。
――――――――――――パァン!!
「ッ!?…ぅあ゙ぁッ!!」
幾つかの銃弾が瑞希に当たり、苦悶の声を漏らす瑞希に向かって、ウェンディーズは嘲笑した。
「ハッ!!今のでこの俺を殺せると思ったか!?鈍いんだよ、バァーカ!!」
瑞希は俯いているため、表情はわからない。しかし、口端は吊り上がっているのがチラリと見えた。
「…なぁ~んてね♪」
瑞希は跳ね起きた。
「そんな銃で俺を殺せると思った?バッカじゃねェ?」
そして傍に落ちていたワイヤーを拾い、振り打った。そのワイヤーは、見事にウェンディーズの左腕を捕え、
――――――――――――ザシュッ!!…ドタン
切断した。