Six Room




なんで




あえてのシェアハウス?




俺が余りにも
がっかりした顔をしたからか






「私の担当なので」
お姉さんはさっきよりも

小さな声で申し訳無さそうに言う








俺は少し考え込む









…どこでもいいって
言ったくせに





と自分でも思う









「…もう




シェアハウスでいいです」




まぁ、今まで通り
人と深く関わらなければ
言い訳で






今はストーカーの方が
一大事だ







お姉さんは少しびっくり
した顔をして





「はい


ありがとうございます!」
とにっこり嬉しそうに笑う




お姉さんは閉じかけていた
シャッターをもう一度開けて
僕をさっきと同じ席に
案内する






「じゃあここにサインを
お願いします」


お姉さんは契約書を出す








「あ!



ここ来年もう取り壊されて
新しいマンションが建つ
予定なので




一年しか契約できない
のですが




大丈夫ですか?」





「今さらですか?





もうサイン書いちゃったんですけど」





「え



ごめんなさい」



お姉さんはまた小さな声で
申し訳なさそうに謝る








なんだか一生懸命だなぁ





と思ったら微笑んでしまう





「大丈夫ですよ





一年で」





一年たった頃には
もうさすがにストーカーも
飽きてるだろうから
一年でちょうどいい




…多分





オシャレなデザイナー
マンションから




出ていくのは少し
心残りだし






悔しいからそのままに
しておこう





一年たったらまた
戻れるように





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