Six Room

「お腹すいてるの?」
と男性が聞く








恥ずかしさで
顔がかぁ―と赤くなる




美亜は顔を見られないように
うつむく


「お詫びに何か奢るから

それで許して!」



こんな通りすがりの人に
奢ってもらうなんて屈辱



男性は「ね?」
とにっこり首を傾げて笑う


「ワン」






…どうしよう




美亜は少し悩む





知らない人に
ついていったりしたら




ママもパパも
怒るに決まってる





あ、今家出中だから
関係ないか






知らない通りすがりの人に
奢ってもらうなんて
ちょっと屈辱だけど








…お腹すいてるからいっか




美亜はうつむいたまま
男性に言う




「じゃあ奢って」






「うん


任せて!」
と男性は嬉しそうに笑う




見た感じ悪い人ではなさそう




男性は少し歩いて
ある場所で止まる








「…ねえ



どうしてマックなの」






「マックだめ?」
って不思議そうに首を傾げる



はぁ…




と美亜はため息をつく





「パスタとかが良かったのに」




「じゃあファッキンにする?」









「そうじゃなくて…」





何も考えてなさそうな
男性の顔を見て


美亜は説明するのを
諦める




「ここでいい」

「ワン」

「何がいい?」

「ワン」

「…何でもいい」





そう言えば

ファーストフード店
で食べるのって初めてかも


周りを見渡す





ふ―ん



意外と思ってたより
キレイ




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