Six Room
「買ったよ―
チーズバーガーセットでいい?」
美亜は頷く
「あ席
そっちがいい」
動く椅子の方じゃない
ソファーらしき方をさす
「え―
俺もそっちがいい」
むっと美亜は
ほっぺを膨らませる
誠司だったら絶対
譲ってくれるのに
「じゃあいい」
美亜はほっぺを
膨らませたままで
椅子の方に座る
しばらくして男性が
美亜に聞く
「…家出?」
…ん?
そんなさらっと聞く?
美亜はただでさえも
機嫌が悪いのに
さらに機嫌が悪くなる
「…悪い?」
「ううん
俺も似たようなもんだし」
「ふ―ん」
「俺ら家出族だね」
「ワン!」
「変な名前つけないで」
美亜はハンバーガーを
頬張りながら
男性を睨む
ふと気になって
聞いてみる
「なんで
家出だって分かったの」
「だってゴロゴロ
持ってるし」
「キャリーバッグの事?」
「そう、それ」
この人もバカなんだろうなぁ…
哀れみの目で男性を見てると
「なんかついてる?」
と彼はまた首を傾げる
…ついてるし
しょうがないなぁ
美亜は彼のほっぺについた
パンのかけらを指でとる
何だか犬が二匹いるみたい
「はい」
「ありがとう」
と彼はにっこり笑う