Six Room
「…1人で住むの?」
「ん?俺?」
「それ以外に
誰がいるの?」
彼は隣に座ってる
ワンちゃんを指差す
「人じゃないでしょ」
あぁそうかと
へらりと彼は笑う
ワンちゃんも
へらりと笑う
…似てる
「いや6人」
と彼は言うと
カバンからパンフを出す
「ここ!」
と彼は指をさす
聞いてないのに
「ふ―ん
キレイなとこだね」
と返すと
「まだ3室ぐらい
空いてるみたいだよ」
「…ふ―ん
いくらなの」
「5万」
なんだ
5万ならバイトしなくても
パパからもらったカード
で払える
少なくとも4ヶ月は
確実に
家ってもっと
高いのかと思ってた
そんなもんなんだ
「美亜も
そこに住もうかなぁ」
「わ―い
家出族が1人増える♪」
「その呼び方はやめて!!」
美亜はもう一度睨む
「食べ終わった?」
「あ、うん」
「じゃあ出ようか」
と彼は立ち上がる
美亜も立ち上がって
一緒にマックを出る
「じゃあバイバイ」
彼は美亜に手を振って
背中を向ける
ワンちゃんは未だに
美亜をじっと見て
異様にしっぽを振ったままだけど
「待って!」
美亜は思わず
彼の服の裾をつかむ
「…あの
美味しかった
ありがとう」
お礼を言って少し笑う
誠司が言ってた
お礼を言う時は
笑顔でって
「いいえ」
彼もふんわり
へらっと笑う