Six Room

いつもの見慣れた
寂れた商店街を通って





草がぼーぼーに生えた
人が住んでんのかすんでないのか

よく分からない家の横を
通りすぎて




車の通れない細い道の先に…






「…ん?



あれ?」






アパートがない。








私は来た道を少し戻ってから
もう一度見る










アパートがない。





そこにあったはずのアパートは
跡形もなく無くなっていた






私は何が起こってるのか
分からずうろたえる






アパートの前にはもう12年
お世話になった





大家のよしおばちゃんが
両手で顔を隠し涙を流してる





「…よしおばちゃん」







私はそっと静かに
よしおばちゃんに近寄って
話かける







「ごめんねぇ




ごめんねぇ」




とよしおばちゃんは
震えた声で繰り返す






「…よしおばちゃん」




私はよしおばちゃんの
背中を擦りながら話を聞く







「借金取が来てねぇ





借金返せないなら
ここを売れって




売らないって行ったら
あいつら潰して行きよった



もうボロボロやったから
ほんのちょっと蹴ったりした
だけでこの様や





悔しい




みんなの帰るとこを
守れんかった





大家失格だよ



ごめんねぇ



本当にごめんねぇ」







私は首を横に振る







「大丈夫よ





よしおばちゃん



よしおばちゃんありがとう
ここを守ろうとしてくれて



よしおばちゃんここが
無くなったのは




すごく悲しくて寂しくて辛いけど





しょうがない事だったのよ

こはもう無くなる運命だったのよ」

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