Six Room





1年に懸けてみよう
と思った







親子の絆は強い

簡単に離れたりしない










それは私が良く知っている






きっと来年の誕生日には
愛花が帰ってくると信じて





今まで愛花と過ごした
家はそのまま残しておく事に決めた









荷物をまとめた
トランクを持って


家を出る





私はカギをしめて
深く頭を下げる





“行ってきます”





どうか“ただいま”
とここに帰ってくる日が
なるべく早く


来ますように








大通りに出てタクシー
を止める






行き先はこれから
しばらくお世話になるシェアハウス






心配事もたくさんあるけど
誰かがそばにいてくれたら
寂しくない






タクシーはだんだん
丘を登っていって



道がでこぼこなのか
ガタガタ揺れ始める







ちょうど丘の一番上に
到達したぐらいから



窓の外に長い長い
レンガの洋風な壁が続く








しばらくしてやっと
お屋敷の入り口が見えてくる






どうやら想像してたより
遥かに大きなお屋敷だったらしく





私は言葉をなくす




「お客様
お金」


とタクシーの運転手さんが
前から手を出す





私ははっと元に戻って
お金を渡す






タクシーを降りると
私はお屋敷を見渡す





ここがこれから
私の過ごす家になる








私は再び深く頭を下げる









「一年間
お世話になります」



私は顔を上げると
1度深呼吸をしてから





大きな大きな門を通る









新しい生活に
密かな願いを込めて





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