Six Room
“引っ越し”
しかない
俺は会社帰りに
不動産に立ち寄って
はってある広告を見渡してたら
ここで働いてるであろう
スーツを来た綺麗なお姉さんが
近寄ってきて
にっこり営業スマイルで
尋ねる
「お引っ越しですか?
もしかして彼女さんと
一緒に住むとか?
それとも新婚さんですか?」
希望に満ちたキラキラした笑顔が
いかにも新入社員という感じだ
「いや
違います
普通に1人で引っ越しです」
と俺もにっこり笑顔で返す
お姉さんがこちらへどうぞ
と案内してくれて
いすに座る
「何かご要望は?」
「あ~
見つかりにくいとこが
いいんですけど」
「…見つかりにくいとこですか?」
お姉さんは意味の分からない
要望に首を傾げる
「なんか
あんま一目につかないとこで」
俺が言い直すと
ああ!
納得した様子で
「かしこまりました」
とお姉さんは
カチカチとパソコンを打つ
検索し終わったのか
「少しお待ち下さい」
と立ち上がると
「こちらはどうですか?」
と何枚か資料を持ってきてくれる
パラパラと資料に目を通す
一枚の資料に
目が止まる
「…すっげ―
豪邸」
思わず口に出てしまって
もしかして独り言
聞かれたかもと
俺はお姉さんの方を
ちらりと見ると
お姉さんは
にこにこ笑ったままだった
良かった
聞かれてなかったみたいで
俺は安心してまた
資料に目を戻す
絶対高いんだろうなぁ
と恐る恐る
値段を見る
え?