Six Room





「5万?!」





俺は予想外の値段に
声を上げる








やば





あまりの衝撃に
また独り言を言ってしまって





俺は顔を上げて
もう一度ちらりとお姉さんを見る







さすがに今回は
聞こえてたみたいで










クスクス笑われてしまった




俺は
「余りにも安かったので」と
小さな言い訳をして
笑顔を作ったけど

苦笑いになってしまった







「ここは丘の上にあって

駅が遠いし
都心からも離れていて



すごく不便な所なので」







「へぇ
そうなんですか」


と俺は頷く





それにしても
安すぎだと思うけど


こういう場合は



大概なにか怪しい理由が
あるに違いない







例えば

…霊が出るとか





俺が疑っているのも
構わず


お姉さんは営業スマイルを崩さず
説明を続ける




「…それと




ここは6人での
シェアハウスとなっています」






「…シェアハウス?」



「はい!



最近人気なんですよ

特にお一人の方は
寂しいでしょうから

大勢での
共同生活も楽しいかと思います


どうですか?」




“お一人は寂しいでしょうから”
っていうのは
少し気に触るが


まあ、それは良いとして






この俺が

6人と共同生活?



そんなの出来る訳がない





ただでさえもなるべく
人と関わらないように
過ごしてきたのに





誰かと一緒に
暮らすだなんて考えられない



「あの条件はすごく
良いんですけど



出来れば他の所を
紹介して頂けますか?」





その後何個か紹介してもらったけど

どれもいまいちピンこず
店を出る


< 9 / 73 >

この作品をシェア

pagetop