よっしゃ、恋愛小説を書こう
「啓介、だれからも告白なんか受けてないってよ! でもさとこ言ったじゃん! 啓介がコクられたって! でも啓介は知らないって! なんで二人でちぐはぐなわけ!?」

「ちょっと、落ち着いてよ、まこと」

「なにさ! どーせ啓介は嘘ついてんでしょ!? 告白したのだって、どっかのだれかじゃなくて、さとこなんでしょ! 二人して白々しくってさ、あたしのことバカにしてんの!?」

「ねえ、まこと」

「えーえー、そーですよ? あたしはバカですよ? だからってさ、二人してこんな」

「まこと」

「タチの悪いいたずらっていうか、そんなことしなくてもさ? フツーに、私達付き合ってるのって言えば、そりゃあたしだって」

「まこと!」

「!」

さとこの怒鳴り声が、反響した。

耳に一瞬だけ、ィインと響き、すぐにまた、風の音だけが残る。

さとこは、またお弁当の包みを開け始めながら、ゆっくり言った。

「まこと、アンタ、誤解してるよ。あたしと今田くんは別に付き合ってなんかないし、今田くんは嘘なんかついてない」

「なに、それ……?」

「今田くんは、嘘なんかついてない。ついたのは……私のほう」

「……」

「だれかが今田くんにコクったってのは、うそ。今田くんが、実はモテてるのは知ってるけど、だれかが告白したって話は、知んない」

「さとこが告白したんじゃなくて?」

「だから私、今田くんのことが好きなんじゃないってば」

「だって今日の朝……」

屋上の手前で、二人で話してたのは、なに……?
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