よっしゃ、恋愛小説を書こう
包みを解いて、ぱか、とお弁当のふたを開けたさとこが、ため息を漏らした。

「あのね、まこと。先に安心させるために、ひとつ教えとくね?」

「あ、うん」

「私、三組の吉田くんが好きだから」

「あ、はあ」

吉田くんといえば……たしか、学年でトップの成績を誇る人だ。

「あのがり勉……」

「そんな風に言わないでよね。私、インテリ系が好きなんだもん。だから、今田くんみたいなこう、むきっとしたっていうか、いかにも運動部って感じの人は、ちょっとね」

「そーなんだ」

いかにも運動部って感じの私も、なんか妙な居心地の悪さなんだけど。

「とにかく」

フォークでウィンナーを突き刺し、それを口に運ぶ手前で、さとこがきっぱり、言う。

「あたしは今田くんと付き合ってないし、別に好きでもない」

「……そうなんだ」

なのにあたしひとり、二人の関係を誤解して……それで、二人を少しとはいえ、避けてた。

あー……なにやってるんだろ。

「――なんか、ごめん」

「ううん、謝んないでよ。むしろ謝るの、私のほうじゃん」

「え?」

「だって、今田くんがコクられたっての、私のうそだもん」

「あ……」

そういえば、そういうことになる。

「なんでそんなうそついたの?」

「頼まれたから」

「……? だれに?」

「今田くん」

「はい?」
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