よっしゃ、恋愛小説を書こう

ひとしきり笑ってからあたしは、「ふう」と息をついた。

「啓介……なんで、さとこはあたしにあんな嘘ついたの？」

「聞いてないのか？」

「アンタに訊けばわかるって」

「……」

「なによ、黙っちゃって」

「言いづらいな」

「なによ」

「いや、なんだ」

「言えってば」

「……」

「……？」

だんまりしている啓介を見つめていると、彼はうつむきながら、呟くように答える。

「お前が……」

「あたしが？」

「……お前が、どう思うか試したかったから、協力してもらったんだ」

「はあっ？」

「はあっじゃねえよ！　ぶっちゃけるとな、正直ショックだったぞ！　俺に彼女ができたら、へーって、なんだそれ！　そこはもっと、こう、あるだろいろいろ！」

「なっ、なによ、いろいろって！」

頭ごなしに決め付けられてるみたいで、なんか、とにかくやだ。

「あたしがどう思おうと、そんなの勝手でしょ！」

「そりゃそうだけどな！　とにかくショックだったんだよ！　いいか俺はな、お前に……！」

――そこでまた、そうやって急にシンとなる。

いつもの口喧嘩だったら、こんなことないのに……。

なおさらそこに、特別な意味があるって、わかってしまう。

「……あたし、に……？」

「……お前に……その、いろいろを思ってほしかったんだよ」

「……」

「お前、勘違いしてるよ。お前は『へー』かもしれないな、そりゃ。けど俺はな、お前に彼氏なんてできたら、それこそ……それこそ、嫉妬するぞ」

そう、また彼の眼差しが、ストレートにあたしを捉えた。