よっしゃ、恋愛小説を書こう
また沈黙がやって来て、あたしと啓介はしばらく見つめあう。

ふぅと、深呼吸した。

「啓介は、……あたしを試したの?」

「悪い」

「さとこは、わざと嘘ついたんだね」

「……すまん」

「さとことアンタは付き合ってないよね」

「そりゃありえない」

「最後にもひとつ」

「なんだ」

「……啓介は――あたしのこと、好き?」

「……ど真ん中、ドストライクで」

そんなとこで、野球みたいな表現するな、バカ。

心じゃそんな文句を言ってたけど、口に出さなかった。

代わりに、右手でグーを作って、啓介の胸を一発叩く。

ぼすん。

「どう?」

「うん?」

「ど真ん中、ドストライク、入った?」

「あー……そう、だな。…………アウト取るには、あと二本ストライク入れにゃ」

「バカ」

左手でグーを作って、啓介の胸へ。

ぼすん。

三球目は、頭突きをしてやった

ぼすん。

「どう?」

もそもそと啓介の腕が動いて、あたしを抱きしめてくる。

ほんと、いつからこんなに大きくなったんだっけ、コイツ。

いつからあたしは、コイツに勝てなくなったんだっけ。

「うん……。やばいな。見逃し三振。アウト」

「やった」

でもごめん、あたしはあたしで、もう投げられない。

ピッチャー、へばりました。





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