よっしゃ、恋愛小説を書こう




『小説すっごくおもしろいです、応援してます!』

「……が?」

昼休み、あたしが見せたケータイの画面から顔を上げた啓介の第一声は、それだった。

「が? じゃないよ! 感想だよ、感想! あたしの小説に感想ついたの!」

「お前さ、こんなんでテンションあがりすぎだろ」

「だってうれしいじゃん!」

「あのな」

はあ~、と啓介の長いため息。

今日も読んでいる夏目漱石を、ぼすんと机の上に乗っける

「それ下に、『私のも読みに来てください!』って書いてあるじゃん。めちゃくちゃ宣伝目的じゃんかよ」

「そうかな?」

自分でも画面を見ながら、ぼやく。

うん、たしかに書いてあるけど……

「でも、すっごくおもしろいです! って書いてあるしさ」

「どれくらい書いたんだよ?」

「うん? まだ20ページくらい?」

「どんぐらい話進んだんだよ」

「んー……男の子と女の子が一緒に帰ってるシーンぐらい?」

「たったそれっぽっちで『すっごくおもしろいです!』って言えるそいつ、頭おかしーんじゃねえの? いだっ!?」

今日も今日とて、啓介はあたしからびんたをもらうのでした。

コイツはほんと、一言も二言もよけいなことを言うんだ。

デリカシーのかけらもない。
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