実話〜Jituwa〜

その建物は、原爆の資料館でした。



館内に入ると、真夏のような室内、赤黒い照明、『ゴー』という騒音、悲鳴、泣き叫ぶ声………そして、建物の外で嗅いだあの臭い―――。


    『資料館って、本格的……。』


呑気にもそう思っていました。


音はともかく、臭いは我慢出来ません。
ハンカチで鼻を押さえて我慢していました。


進むにつれて、頭痛がしてきました。
なんだか、イライラしてきました。
臭いも濃くなり、吐き気もしてきました。


私は、思わず、

「やめてほしいよね‼」


私がつい、言ってしまいました。


「はっ?………何かした?」


友達は、目を丸くして、私を見ました。


「だからぁー、照明とか、臭いとか、音とかぁー」



「臭い?音?………何の?」

きょとん、という顔を初めて見ました。


―――そこで、理解しました。


怒号も悲鳴も臭いも、あの景色は、私だけが見えていたことに…………。




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