最後の世界がきみの笑顔でありますように。
◇episode crack〜亀裂
「失礼します。」
夏休みに入って数日。あたしは病院に来ていた。
「いらっしゃい。久しぶりだね。」
いつものように日比谷先生は、笑顔であたしを迎えてくれる。
「お久しぶりです。」
しばらくたわいもない話をしてから、検査が始まった。
「最近は変わった事はあったかな?」
検査をしながら、先生が尋ねてくる。
「…はい。変わった事というか………。」
最近、人とぶつかる事が多くなった。でもこれは…。関係無い気がするし……。
「幸ちゃん、気になる事があったら、何でも話してね。思いがけ無い事が進行のサインだったりするから。」
「あ…はい。実は、最近、人とぶつかる事が多くなったんです。私の注意力の問題だとは思うんですけど…。」
あたしの言葉に、先生の顔色が変わった。
「…な…んだって……?ちょっと待っててね。」
そう言って先生は、慌てて診察室を出て行った。
「な……んなの……?」
急に不安になる。診察室に1人残されたあたしは、自分の体を抱きしめた。