最後の世界がきみの笑顔でありますように。
「坂原君、まず、幸の命を救ってくれてありがとう。君がいなかったら…幸は助からなかった。」
男性はそう言って深々と頭を下げる。
「そんな…。顔を上げて下さい、おじさん。」
坂原は、幸の父親である、漣 京太郎(サザナミ キョウタロウ)の肩に触れた。
「幸はあの日、先生から『完全失明』すると宣告されたんだ。」
「…そうですか……。それで………。」
その先はお互いに言わなかった。…言えなかったのかもしれない。
「幸は『心的外傷後、ストレス障害』らしい。死を経験した後や、心に傷を負った時になる障害だと言っていたよ。」
「それで忘れてしまったんですか…?」
坂原の言葉に、京太郎は頷いた。