最後の世界がきみの笑顔でありますように。


「何言って…。」


「あたし失明するの!!何も見えなくなっちゃう!!真っ暗なんだよ…。朝起きても、太陽の光すら感じる事が出来なくなるの!!」



坂原の言葉を遮って、感情的に叫んだ。


こんな事…。坂原に言ってもしょうがない…。そんな事は分かってるのに…止められない。



「視力を失ったら…家族の事も…友達の事も…好きな人の顔さえ何年、何十年先も覚えていられない!!大切な人達の顔を忘れちゃう!!いつか…。自分の顔さえ分からなくなる!失っていくだけの人生になんの意味があるの!?」



涙が次から次へと溢れ出す。涙は枯れる事は無い。その事を改めて知った。



「…っ…お願い!!もう死なせて!!」



病気から…その恐怖から…。もう解放して……。




「死なせるかよ!!」


坂原は今までに聞いた事の無い、怒りを表した声で叫ぶ。



一瞬、体がビクリと震えた。



「俺は、漣を離せない!!嫌われてもいい!!漣が泣いても、絶対に離さない!!死なせない!!好きなんだよ…漣が…。」



坂原は強く強く抱きしめてくる。嬉しいのに…心が苦しいのは何でだろう…。



あたしも好き…。坂原が好き…。



「漣が…漣が何かを失った分、俺が漣にあげる。何度だって…。漣は失うばかりじゃ無い!!」




「…っぐすっ…あたし…障害者なんだよ?今は健全に見えてても…あたしは障害者になる!!坂原の重荷になる…そしたら坂原だって…あたしから離れていくでしょう…?」



だから…家族なんてモノは一生手に入らない。女としての幸せさえ……。











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