最後の世界がきみの笑顔でありますように。
◇episode time〜時間
夏休みが終わり、体育祭が終わり…。あたしはいつものように、同じ日々を繰り返していた。
記憶を失った事で、家族とはまた違う絆が出来た。
ただ一つ。違う事といえば……。あたしに彼氏が出来た事だ。
「…どーしたの?幸。」
ぼーっと遠くを見つめているあたしを、坂原は心配そうに見つめている。
「…何も無いよ。」
そう言って笑顔を返すと、陽も安心したように笑った。
いつもいつも…。あたしを見ていてくれる。
あたし達は、学校をサボって川原に来ていた。
太陽が出てるから、陽は外に出るのは止めようって言ってたけど、強引にあたしが連れ出した。
だって…。あとどれくらい、あたしの目が生きているかわからないでしょ。
沢山の物を見て、この目に焼き付けたい。
空を見上げる。青くて…雲一つ無い。快晴だ。
「………綺麗だね…。こうして空が綺麗に見えるのは、あたしの目の命が、残り少ないからだね。普段何気なく見ていた物が、こんなに尊い物だったんだって気付けた。」
「何言ってんの!見えなくなっても…俺が、幸の目になる。だから大丈夫だ!!」
そう言って陽は、ニッと笑う。
あたしとしては、空なんかより、陽の笑顔が見れなくなる方が辛い。
もちろん陽には、こんな事言えないけれど。