最後の世界がきみの笑顔でありますように。
◇episode pairwing〜片翼
あれからファミレスで昼食をとり、川原へ来ていた。川原に腰を下ろし、二人で寄り添って夕日に照らされる川を見つめる。
少し肌寒い秋の風が、あたしと陽の髪を揺らす。
「…幸と此処に来るのは…何回目だろうな…。」
陽の言葉に、あたしは小さく笑う。
「…さぁ?数えられないくらいかな…。」
本当…この川を、陽と何回見て来たんだろう。いつしかこの場所は、あたしと陽の思い出の場所になっていた。
「…幸、今日何の日か知ってる?」
しばらく二人で川を見つめていると、陽が口を開いた。
「………22日。」
「え、あぁまぁそうなんだけど…そうじゃなくて…。」
その言葉に、あたしは首を傾げる。陽は一体何が言いたいのか…。
「うーん…やっぱり覚えて無いんだね。」
陽は苦笑いを浮かべた。
「幸…。今日は幸の誕生日なんだよ。」
陽に言われて目が点になる。誕生日…あたしが生まれた日?
「知らなかったー…というか忘れてた。」
「やっぱりね。幸、病気の事とか…家族の事とかでずっと一人で悩んで、誕生日とかそういう事を気にする余裕も無くて、忘れてるんじゃないかって思ってた。」
陽の言葉の通りだ。そんな事、考えている余裕なんて無かった…。
今までは…ね…。
陽と出会ってから、自分の事に目を向ける機会が増えた。陽が…あたしの不安を一緒に抱えてくれるから、余裕が出来たんだ。