最後の世界がきみの笑顔でありますように。
◆episode injury〜傷
12月の上旬。冬休みまで後少し…。吐く息は白く、季節が冬だと告げている。
「はぁー…。」
手を温めようと、息を吹き掛ける。その息が白くなっていた。
「……寒い?」
陽は、あたしの手を掴んで自分のポッケに入れた。
「あ、あったかい…。」
恥ずかしいけど…。こういう陽の優しさが嬉しい。
陽の手も冷たかったけど、繋いでいるうちに、お互いの手が熱を持ってきた。
「寒いなー…。幸、風邪引かないようにな?」
「それは陽も同じでしょ。」
寒い冬の中、学校へ向かいながら二人で笑い合う…。こんな時間が幸せだ。
あたしの目も、今では横にいる陽さえ見えない。
そこまで視野狭窄が進んだのだ。あとどれくらいあなたを見ていられるのか…。
ずっとあなたを見ていたい…だから隣を歩く陽に顔を向ける。あなたがちゃんと見えるように…。