最後の世界がきみの笑顔でありますように。


勉強を始めてから1時間くらい。あたしは伸びをして机に突っ伏した。



ガラガラガラ…ピシャンッ


図書室の扉が開く音がして慌てて顔を上げた。


もしかしたら陽かもしれない…そう思ったから。



「…よぅ………。」



だが、入ってきた人物は陽では無かった。



部屋から入ってきた人物はあからさまに落胆するあたしに苦笑いを浮かべる。



「お目当ての奴じゃなくて悪かったな…先輩。」



そう言ってあたしの前の席に座る。



「おはよう七瀬。」



最近こうして七瀬と過ごす時間が増えた。



「何やってんだよ。」



七瀬はそう言って、あたしの手元を覗き込む。



「点字?」



七瀬は不思議そうな顔して、首を傾げている。



当然だ。点字を勉強する人間なんてそういない。



「そう。点字。」



あたしはそのまま点字の勉強を続ける。そんなあたしのおでこを、七瀬は弾いた。



「痛っ!?」



『何するんだ』という意味を込めて、おでこをおさえながら七瀬を睨みつける。


「なんで点字なんか勉強してんだよ。」



七瀬の言葉に、ドキリと心臓が鳴った。



七瀬にはあんな場面を見られた事もあって、色々相談に乗ってもらっていた。



というより、七瀬がしつこく聞いてくる。それはそれで助かっている。正直一人で抱え込むには荷が重かったから…。



だから…七瀬には話してもいいかな。これは、あたしが病気だと認める事になる。



話さないという事は、逃げるという事だ。自分の病気と向き合うって決めたから…。



一緒に生きていくって決めたから…。



「あたし、失明するの。あと何ヶ月後…何年後なのかは分からないけど…。」



そう言って笑う。そんなあたしを、七瀬は目を見開いたまま見つめていた。










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