最後の世界がきみの笑顔でありますように。
ピッ
「…さ、幸!?」
「………………。」
つい押してしまった。あたしが出るとは思っていなかったのだろう。陽の焦った声が聞こえる。
どうしよう…何を言っていいのか分からない…。
「…幸……?」
「…………うん。」
陽の存在を近くに感じる。たかが電話なのに…陽との距離が、ずっと縮まった気がした。
「…話しがある。もし聞いてくれるなら、あの川原に来て…。」
ドキン…
心臓が脈を打つ。
「俺…ずっと待ってるから…さ…。」
風の音がする。陽はすでに外にいるようだ。
「…あたしは……行かない…。だから…家に帰って。」
あたしが行ったら……駄目たんだ…。
「待ってるよ…幸…。」
プツッ……
陽は電話を切った。携帯を耳に当てたまま、しばらく動けなかった。
『待ってるから』
陽…あたしは行けない…。
「…行けないよ…。」
だから………お願い…。家に帰って。こんなに寒い中、陽ならずっと待つつもりだろう。
「…さよならって…言ったでしょ………。」
もう終わったんだよ…。だから…あたしの為に、そこまでしないで…。
陽の傍にいたい…今すぐ会いに行きたい…。そんな気持ちと、もう会いたくない…傷付きたくない…。そんな気持ちが責めぎ合う。
あたしは自分の体を抱きしめた。陽への気持ちを、必死に抑えるかのように…。