最後の世界がきみの笑顔でありますように。


あたしは地面に手を付けながら、陽を探す。



「陽…陽……?」



放心状態のまま、あたしは陽を探す。



「陽っ…陽!!何処にいるの!!」



叫びながら手探りに進む。陽が跳ねられた…。陽が…。



「…さ……ち………。」



か細い陽の声が聞こえる。


「…陽っ!!…陽!!」



何度も名前を呼ぶ。どうしてこんな時に…。あなたの傍にも行けないなんて…。


悔しくて涙が出る。



「…さ…ち…無事で…よか…。」



こんな時まで、あたしの心配なんかして…。



陽は近くにいる。陽の声が聞こえる距離にいる。



なのに……。どうして…どうしてあなたの傍に行けないの?



「さ…ち………。」



あたしは必死に手を伸ばす。その手を、誰かに握られた。



声を聞かなくても分かる。この手は…あなたの手…。



「陽っ!!」


その手を両手で包み込みながら、強く握った。



「…はぁっ…無事…良か…った…。」



「何言って…自分の心配してよっ…。」



陽の手は、物凄く冷たい。ドロドロとした、鉄の匂いのする液体がついている。


「…こ……れ……。」



それが血だと気付くのに、時間がかかった。



「…う、嘘っ……嫌だ…陽っ!!」



「…泣く…な……。」



陽の手が、あたしの手を弱々しく握り返す。









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