最後の世界がきみの笑顔でありますように。


あの後陽は病院に運ばれたけど、生きて帰ってはこなかった。



それでもあたしは、また笑顔を見せてくれるんじゃないか……。そう思っている。



陽が死んだあの日、あの時、あの瞬間から、あたしの時間は止まってしまった。


何度も何度も、陽の姿を探す。何度も名前を呼ぶ。何度も川原へ行った。



それなのに………。陽は何も言ってはくれない。



「陽……。どうして寝てるの?」



棺の中に入れられた陽に触れながら、話しかける。


どうしてこんな所にいるの?



「何か言ってよ……。」



あたし…分からないよ…。


「陽…?どうしたの?具合が悪いの?」



棺にしがみつく。


「幸!!」

「止めるんだ!!」



そんなあたしを、お父さんとお母さんが止める。



「…お姉ちゃん……。坂原先輩は…もう…。」



「……違う………。違う…違う…違うっ!!!」



耳を塞いでうずくまる。今なら…あたしの聴覚を奪ってもいい。もう何も…。



「聞きたくないっ…!!」



お父さんとお母さんの手を振り払い、棺にしがみつく。



「それでは…始めます。」


知らない人の声が聞こえる。



「幸、こっちに来なさい。」

あたしの体を、お父さんが抱きしめた。









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