この恋は秘密
第13話 コンサートチケット
急いで玄関に出ると翔がニッコリ笑い、小さく手を挙げた。

「ここじゃ、騒がしいな」

翔は機材や照明のある外廊下を抜け、エレベーター前の非常階段の扉を開けると、踊り場まで私を連れて行った。

「勉強中なのにごめん」
「ううん」

冬の寒さに少し体が震える。

カーディガンでもはおってくれば良かった。

そう思った瞬間、ふわりと肩から翔のジャケットが掛けられていた。

「あ、いけね。綾乃さん、ちょっとごめんね」

掛けたジャケットのポケットに翔の手が入る。

く、くすぐったい。

「あった!」

翔がポケットから封筒みたいなのを出す。

「これ、良かったら来てくれないかな?」

翔から手渡された封を開け、彼を見た。

「……これ!」

「この時期だから、誘おうかどうしようか迷ったんだけど、やっぱり綾乃さんに観に来て欲しくて。もらってくれる?」

翔がくれた『SILVER』のコンサートチケットをじっと見つめる。

そう言えば、友達が言っていたことを思い出す。

入手困難で、オークションでもS席は5万円、前列の良席では20万円はするって聞いた。

それなのに、翔が今、くれようとしているチケットは3列目のセンター席。

「どうかな?無理そう?」

チケットを持つ手が震える。

行きたい。
でも、無理。
こんな高価なチケット……もらえない。

彼に返そうとした時、その手を翔が握り締める。

「来て」
「翔……」
「1分でもいい!」

扉の向こう側から、「翔!出番!!」と言う叫び声が聞こえる。

「綾乃さん!」

根負けして、首を縦に振ってしまう。

「ありがとう!!」

翔は私の手を両手で握り締め、はち切れそうな笑顔でシェイクした。








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