君は偽りのキスをして笑う
「…」
「美亜…可愛い」
しつこい。
そんな、可愛くない。
無言のあたしに構わず、広人はぎこちなくあたしを押し倒す。
ああ…もう。
そして、広人の舌が首筋に這った時だった。
嫌…気持ち悪い。
エッチの前にこんな気持ちになるのは初めてだった。
あ、そっか。
好きじゃないからなのかな…
元彼とは、どれだけ激しくされても嫌とは一度も思わなかったし。
…これが、潮時か。
ドカッ
「うわっ…」
あたしは軽く、抵抗程度に広人を蹴る。
広人は突然の事に驚いていた。
「ごめん…」
「美…亜?どした?」
「あたし、広人とはヤれない。」
そう告げて、あたしは鞄を持って部屋を出ようとする。