君は偽りのキスをして笑う


電話で美亜と会話しながら、美亜のいる公園へと歩く。

公園につくと…


美亜が隅のベンチに座って、自分の足元を見ながら電話をしていた。

「美亜」
『ん、何?』
「顔上げてみ?」
『…へ』

すると、美亜は携帯を耳に当てたまま顔を上げた。


正面にいた俺と目が会う。

美亜は…

やはり、泣いていた。


俺は携帯をしまって美亜に近づいた。

「なんで泣いてんの。そんなに俺と電話するのが嫌なのか…」
「違うよ」


美亜は突然の出来事に耳から携帯を外すのを忘れている。

「馬鹿」
「あっ…」

俺はそんな美亜の携帯を手から奪った。


「もう、電話きれてるし。」
「分かってるよ。返して」
「どうせエロいのばっかだろ、今さら隠すなよ」


そんで、2人して笑った。


もう、その時から恋愛感情があったのかもしれない。

気づかなかっただけで…

俺は既に美亜に恋をしていた。


気づいたのがおそかったんだ。

「さーむっ」

携帯を返してもらった美亜はかじかむ手を擦って温めていた。

「どっか入って電話すりゃよかったのに。つか、家とか?」
「もうすぐ夏なのに夕方は肌寒いね〜」
「誤魔化すな。」

美亜はバレたか、といったような顔をした。


「家鍵、忘れた。」
「親は?」
「仕事、つぅか夜遊び?」

美亜が歯を見せてニッと笑う時は、嘘の笑顔。


「俺の家くるか?」
「…ふっ」

美亜は鼻で笑った。


< 18 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop