秘密のMelo♪y*番外編*

たった今見たことも、今までのこともなにもかもなかったことにして、隠し持っていた婚姻届にサインをさせた。

むろん、騙して。

楓くんは騙し切れるか心配だったんだけども、さっきのことで動揺していたのか特に疑うことなく名前を書いてくれた。


ほっと安心した私は、その足で日本へ飛んだのだ。

楓くんのご両親に了承を頂き、保証人の欄にサインを頂くためだ。


「たのもーっ!」


どかどか上り込んだ彼のうちには、折りよくご両親が揃われていた。


「実は大切なお話があるのです。…あ、わたくし藤峰と申します。息子さんには、うちのバカ娘が大変お世話になりまして」


「まあ! まおちゃんのお父様でしたか。あ、で、では藤峰洋平さん……きゃああ~! どうしましょパパったらっ」


鼻息荒く興奮する目の前の女性は恐らく楓くんの母だろう。

うむ。似ても似つかん。

…が…二人とも美形だな…。その点は似ていると言えるか。

だが…。


「ゆ、夢かっ。これは夢かっ。あの可愛い真裕ちゃんもさることながら、まさか世界の藤峰家とこうも関わることになろうとは! か、かあさんっ。アレだアレ!」


「わ、分かったわっ」


―びたたたたたんっ


「ひ?」


な……なにをなさっておいでだこの二人は…?


さしもの私も思わず口をぱかっと開いて固まった。

突如目の前で連続ビンタをし合う夫婦がいれば、誰でも固まると思う。


「ゆ、夢じゃないわね…!」


「ああ。夢じゃないな…!」


……。

楓くんも実はこうなんだろっか…。

それとも反面教師的な感じで育ったんだろっか…。


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