五里霧中



いつか遊びに来たおじさんが言っていたこと。


お前はお母さんのお荷物だって。


身ごもった女は使い物にならなくなっちゃうんだぞって。


何でか知らないけど怒られた。


それからおじさんはアタシを舐めるように眺めて、にんまり笑った。


表現できないような気味の悪い笑み。


言葉を知った今でも言葉には表せない、体中に鳥肌が立つような笑顔だった。



おじさんは腰が抜けてしまったアタシを見下ろし、厭らしい声で言った。


『お母さんは今いないからお前が代わりをしろ』


意味がわからなかったけど、危ない人だってことだけは理解できる。



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