五里霧中
《寂寞の傍で》
ボクにはほとんど一日の記憶がない。
なぜならボクの中にはたくさんの『ボク』がいるから。
お世話になってるお兄さんの話では、10人ほど隠れているらしい。
まぁ、ボクは一度も会ったことがないんだけどね。
お兄さんはよくボクのことを『お菓子の詰め合わせセット』だとか、『おもちゃ箱』だとか言うけど、ボクはそうは思わない。
きっとボクはそんな可愛らしいものじゃないんだ。
もっと……醜悪で汚い存在、なんじゃないかな。
だから親にも捨てられたんだろうし。
ボクがお兄さんのような人だったら、きっと両親だってボクを捨てなかっただろう?