五里霧中



「さぁ、生贄よ。私の前に跪き、その穢れた体を差し出すのだ」


そう言うと男はニヤリと笑い、ボクの傷だらけの体を見て満足そうに頷いた。


この顔を見るたびに吐きそうになる。


コイツは自分よりも下等な者を見て優越感に浸る下郎だ。


でもそんな下郎に足蹴にされている自分は、


「……はい、ご主人様」


もっと醜く汚い虫けらなんだろう。



芋虫のように這って男の足元まですり寄る。


偉そうに椅子に腰掛けた男は、骨が浮き出たボクの背中を踏みつけ、ギラギラと嫌らしく輝く金歯を覗かせて笑った。


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