五里霧中
「だから外に出かけようと思うんだ。クロがどんぐりを見たいって言いだしてさ」
嘘ではない。
クロが何かの本でどんぐりを知って、その実物を見たいと言いだしのだ。
しばらく応答を待っていると、静かに重い扉が開かれた。
「……オレたちは行かないよ」
「どうして?具合でも悪いの?」
「……カイルをできるだけ外には出したくない」
揺れる瞳でそう言われても説得力ないなぁ。
「カイルも大分傷心だろ?だから綺麗な紅葉を見せて心を癒してあげたいんだ」
「……ちょっと待って」
パタンと扉が閉じ、中で繰り広げられている会議の声が漏れ聞こえてくる。
殺す、とか死ぬ、とかいう危ないワードが聞こえてこないだけ進化したと言える。