五里霧中
耳を疑った。
だってあり得ないから。
私が?私がお母さんを殺した?
「首を絞められた君は命の危機を感じたんだろうね。女の子とは思えない力でその人をひっくり返してさ、包丁で、ぐさー」
男は手を前に突き出して、何かを刺すような仕草をして見せる。
まさか。
「……嘘つかないでよ。私がこの人を殺すはずがない。だって、」
「実の母親だから?ハハハ、そんなの言い訳にならないよ。その証拠に彼は実の伯父と伯母を殺したし」
男が指さす先に視線を向けると、そこには返り血を浴びて鮮血に染まった兄がいた。
嘘だ。
全部全部嘘に決まってる。
私が殺人者だなんて、間違ってる。