五里霧中



耳を疑った。


だってあり得ないから。


私が?私がお母さんを殺した?



「首を絞められた君は命の危機を感じたんだろうね。女の子とは思えない力でその人をひっくり返してさ、包丁で、ぐさー」


男は手を前に突き出して、何かを刺すような仕草をして見せる。


まさか。


「……嘘つかないでよ。私がこの人を殺すはずがない。だって、」


「実の母親だから?ハハハ、そんなの言い訳にならないよ。その証拠に彼は実の伯父と伯母を殺したし」


男が指さす先に視線を向けると、そこには返り血を浴びて鮮血に染まった兄がいた。


嘘だ。


全部全部嘘に決まってる。



私が殺人者だなんて、間違ってる。



< 227 / 351 >

この作品をシェア

pagetop