五里霧中
◆第三章◆
《愛憎の隣で》
* * *
僕等の住んでいるこの街では、9月の半ばに夏祭りがある。
町起し的な意味もあるらしく、こんな田舎には少々ハデすぎるくらい盛大なものだ。
街に一件だけある神社で行われ、その境内には数えきれないほどの屋台が並ぶ。
焼きそば、たこ焼きなどのノーマルなものからくじ引き、カラーひよこなんていう珍しいものまで。
まぁ、カラーなんちゃらに至っては、買っている人の姿を見ることもないけど。
さて、無邪気の欠片も持ち合わせていない僕が、何故夏祭りの話なんて持ち出したのか。
真実はいつもひとつ!
毎度の如く、クロが夏祭りに興味を持ったからだ。