五里霧中
「……クロ、常識って言葉知ってるよね?」
「何を言ってるんだね、キミは。常識の意味を一番知らないのは、まさしくキミだろう」
その通り。
言い返す言葉も見つからなかったので、僕は先を促す。
「で?」
「そうそう、今深夜放送のローカル番組を見ていたのだ。そしたらクロはまた新しい言葉を知ったのだよ!」
クロは真っ暗な部屋の中で、異常なまでに目を光らせて語り続ける。
……猫は夜行性だったっけ?
「夏祭りだよ、夏祭り!毎年この街でも騒がしい晩があると思ったら、そのせいだったのだな」
感慨深げに頷くクロに、僕は目を見張ることしかできなかった。
正直言うと、目を見張るってどういう意味かわからないけど。