五里霧中
僕も隣に座り、リンの話に耳を傾ける。
「そうだね。ずっと、こんなところには無縁だったから」
「いいよ。昔の話なんて。今が幸せなら、リンはそれで満足なんだ」
穏やかな笑みを浮かべたリンの横顔は、どうしてだかいつもより大人びて見えた。
祭りの熱気もどこか対岸の火事のように思え、僕は水中にでも放り込まれたかのような不思議な気分に浸っていた。
「にぃに。にぃには、リンのこと好き?」
不意にリンが僕の袖を引き、そんなことを尋ねてくる。
どう答えようか迷ったけど、ここは存外にできないっぽいので簡単に。
「好きだよ。妹としてね」
この言葉がどれほどリンを傷付けるかわかっていたから、あえてそれを選んだのかもしれない。