五里霧中



ほら、くどくどと考えてたらあっという間に到着した。


『東探偵事務所』と書かれた怪しげな看板を横目に、僕はその重い鉄の扉を開いた。



「東さーん、いるー?」


まだ朝だからか蛍光灯は鳴りをひそめ、室内は必要以上に暗い。


早く来すぎたかな。


でもあの人、ほっとくと昼過ぎに起きてきて「いい朝だ」とかわけのわからないことを言い出すからなぁ。


突っ立っていても仕方ないから、堂々と二階の部屋に上がることにした。



それにしても、相変わらず汚い。


汚れとかじゃなくて、あちこちに物が散乱している。


事務所自体は管理人のお陰でとても綺麗なんだけどね。


失敗はあの人にここを貸してしまったことだ。



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