五里霧中
梓とは、奇しくも東の彼女。
こんなダメな大人のどこがいいのかいつも疑問に思う。
ただ、そう考えるとうちの連中もどうしてこんな胡散臭い僕についてきてるのか疑問になるから深くは思索しない。
迷走した迷想に足を取られる前に意識を移しておこう。
「それで、彼女の名前は?」
「施設ではレイと呼ばれてたらしい。でも大抵の場合、里親に預けられて名前が変わっちまうからな。宛てにはならねーよ」
「十分です。これで大分ピースが揃いましたから」
僕はこれ以上話すことはないと、立ち上がった。
何も言わず紫煙を燻らせる東は、そんな僕を一瞥して小さく溜息をつく。